[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

Bicycle−つれづれなること

水分

自転車にとって大敵でありながら避けられないものの一つは何といっても水分だろう。これまた「永続的かつ不可避な闘い」の相手である。梅雨と酷暑の夏を過ぎてみると,自転車がそれらから受けたダメージの程がよく解る。

(1)雨

1年のうち温暖な時期に多くの雨が降るというのは,日本に限らず東アジアに共通した特徴である。気温の面では比較的自転車乗りに都合のいい時期が,自転車にとっては厄介な時期に当たるわけだ。

寒い時期でなければ,雨に降られても風邪を引いたりすることが少ないだけに,梅雨時はもちろん,時には夕立や台風の時でも,雨の中自転車に乗ることもある。この場合一番の危険は何といっても,制動距離が伸びる,すなわちブレーキが効きにくくなることだ。ブレーキは摩擦によって運動エネルギーを熱エネルギーに変換するというのが,そもそもの原理なのだから,これは必然にして不可避だ。中には構造上その影響を受けにくいものもあるが,それとて影響がゼロになるわけではない。また制動力が低下しないものの,ただ車輪をロックするだけとなって,コントロールできなくしてしまうだけというものもある。

ブレーキ以前に,走行すること自体も摩擦によって成立していることを忘れてはならない。そうである以上,それが損なわれる現象,すなわちスリップも自転車乗りにとっては危険なものだ。自転車の走行方向の力がうまく伝達されていなければ,単なる空回りだが,スリップはそれ以外の方向へと自転車と自転車乗りを導くものだ。それだけよりいっそうコントロールとバランスを失わせるものだ。しかも,雨が降っているときだけではなく,止んだ後も地面が濡れている限りその危険は続く。滑りやすいところとそうでないところが路面上に混在し,しかも均一に乾燥するわけではない以上,それもまたスリップの危険を生み出す要因となる。マンホールや側溝のふたなどはその典型だろう。

ただでさえ視界が限られる中で,身につける雨具がさらに視界を遮ってしまう。一般的なビニールの雨合羽や自転車用として売られているポンチョ型のものでは,走行中顔面に容赦なく降り注ぐ雨を遮ってはくれない。また,ただでさえ湿度が高くなる中で,抜けることのない汗でべっとりとまとわりつくことで,雨の日のうっとうしさがよりいっそう身にしみてくる。

さらに地面からの跳ね返りにも悩まされる。車が跳ね上げてしぶきになった路上の水たまりの水のようなものだけでなく,ちょっとしたものでもその積み重ねでかなりの汚れとなってしまう。雨水が含んでいた都会の空気のゴミやチリ,路面上にあった泥や砂など,その原因には事欠かない。こうして出来た衣服の汚れは,特に黒ずんだものは油やカーボンなどを含んでいるだけに,クリーニング店でもお手上げだという。泥や砂はギアやチェーンの敵でもあるようだ。雨で油が洗い流されたところを,容赦なく噛んでは削ってしまう。これは長期的にみれば錆や腐蝕同様に厄介なものだ。

こうして容赦なく浴びせられた雨水は,表面を流れてゆくだけでなく,フレームの内部にも溜まる。フレームには水抜き用と思しき穴があるが,これが十分機能することはない。というのは,フレームの最も低い部分をボトムブラケットが占領しているためだ。そこで後輪取付部に近いところに穴が配置される。雨の後など,後輪を固定して自転車を垂直に立てると,穴から赤錆混じりの水が流れ出てくる。そのままにしておけばフレームが内側から腐蝕してしまうところだったわけだ。

秋・冬になると,こうしたものに冷たさが加わって,いっそう物寂しさを醸し出してくれる。松任谷由実の「冷たい雨」のフレーズが想い起こされたりする。

(2002.10.1)

Bicycle-つれづれなること: