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あぁ骨折

(3)労災受給へのLong and Winding Road

おことわり:このページはあくまで筆者個人の体験・事例に関する記事を掲載したものです。労災に関することは,このページでも参考にした(財)労災保険情報センターなどのサイトをご覧ください。

かくして,通勤途上に自転車で転倒して骨折し,手術を含めた約2週間の入院と10ヶ月に及ぶ通院を要することになった。これとともに始まり,治療終了後も続いた労災受給への道のりを振り返って,気づいたことなどを綴ってみることにする。

通勤途上の事故も労災給付の対象だ−業務災害と通勤災害

通常労災保険と聞いて誰もが思い浮かべるのが業務災害だろう。これは文字通り仕事中生じたもののことだが,詳しくは労働者が労働契約に基づき,事業主の支配・管理下にあった状態に起因して生じた災害のことだ。ついでに言っておくと,業務災害は労働基準法により事業主に災害補償責任が課せられていることを根拠としている。

だが労災保険の対象はこれだけではない。住居と就業場所との往復途上についても補償の対象となっている。これが通勤災害で,私がこの件で給付されたのもこれだ。

業務災害と通勤災害とは,その成り立ちや法的根拠は異なるものの,同じ労災保険である以上,認定されて給付される内容は,療養補償給付又は療養給付 休業補償給付又は休業給付 と,ほぼ同じだ。各々前者,「補償」が附く方,が業務災害,後者が通勤災害にたいするものだ。名称に若干の違いがあっても,認定方法やそれによってまかなわれる対象・範囲は同じだ。

自転車通勤も通勤災害の対象だ

通勤災害の認定にあたって,通勤手段の如何は問われない。徒歩でも自転車でもバイクでも,自動車でも,電車・バスなどの公共交通機関でも何ら変わらない。問題は住居と就業の場所との間の往復であるか否かだ。寄り道・回り道した場合などは逸脱又は中断とみなされ,通勤災害の対象にならないことがある。

通勤災害の可能性や通勤手当の支給を口実に使用者−会社が自転車通勤を認めないところもあるようだ。しかしいずれも理由にはなり得ないものだ。

労災指定外の医療機関についての労災給付

病院などの医療機関には労災指定のそれとそうでないものとがある。労災と認定されればいずれで治療を受けてもかかった費用は労災保険から給付されるが,労災指定以外の医療機関では,いったん全額を自己負担したうえで,労災申請が認められた後その分が給付金として戻ってくるしくみだ。ここでいう全額とは健康保険を使った場合の本人負担分(多くの場合3割)ではなく,まさに全額(つまり10割)だ。

労災申請から実際に給付金が出るまで何ヶ月もかかるのが普通だ。それまで自己負担で持ちこたえなければならない。健康保険は使えないが,ひとまず健康保険を使って受診しつつ労災申請をして,労災が出るまで健康保険に一時立て替えさせるという手もある。もっとも手続きが面倒だし,かかるやり方を嫌う医療機関もある。また個人的に入っている傷害保険のたぐいがあれば,その給付金でしのぐ手もある。

労災申請には,実際に医療費を支払うこととともに,申請用紙に,本人が労災事故の情況について記入するのとあわせて,使用者(多くの場合会社)と医療機関での所見を記入した上で,使用者所在地を管轄する労基署に提出(郵送)する。また,申請用紙はかかった医療機関ごとに必要だ。たとえば病院から処方箋をもらって薬局に行けば,その分が別途必要になるということだ。それだけ手続きが煩雑になるだけでなく,医療機関の中には労災書類の記入に不慣れなところもある。そうしたところから記入漏れやミスが出て,労基署から書類を返されたり問い合わせが来たりすることも少なくない。

労災指定外の医療機関にかかったところから,労災受給へのLong and Winding Road が始まると覚悟した方がいいだろう。

労災指定の医療機関についての労災給付

労災指定の医療機関の場合,そこで受ける治療その他の医療サービスや出される薬など,労災保険から現物給付されるので,自己負担は不要だ。もっとも何もかもが無制限に労災保険でまかなわれるわけではない。その対象・範囲は定められている。たとえば病院の個室に入院したりすることはできないと言った具合に,必要最低限レヴェルを超えてのものや贅沢の部類に入るものまでは対象外になると言うことだ。

ただし,通勤災害の療養給付の場合,初診時に一部負担(200円)が必要だ。また労災申請書類が不備なまま受診すると,なにがしらの費用をいったん自己負担しなければならないこともある。

ともあれ,労災申請書類を作成して労災指定の医療機関で治療を受ければ,高度なことを要求しない限り,後は治療に専念しやすいだろう。

申請するには

労災を申請するには使用者の協力が重要だ。労災の申請先は使用者所在地(会社の本社などの住所)を管轄する労基署だ。申請者の自宅や就業場所や事故現場のそれではない。申請者本人による労災事故の情況説明,使用者の証明,医療機関の所見を申請書類に記入する。提出は郵送でいい。申請書類は,業務災害と通勤災害,労災指定医療機関か否か,さらには医療機関の種類(病院・薬局・接骨院など)などによって異なり,複数のそれにかかった場合はそれぞれについて提出しなければならない。

また継続・反復するものについては,それが完了してからまとめて申請することも,ことあるごとに申請することも,一部をまとめて申請することも可能だ。労災指定外の医療機関で支払った費用や療養[補償]などを早くもらうにはこまめに申請した方がいいが,その都度書類を記入し郵送する手間が本人と使用者にかかる。

労災を認定するのは労働基準監督署(労基署)だ。雇用主−使用者ではない。業務災害であれ通勤災害であれ,使用者に労災申請を拒む理由も資格もない。万一労災に該当する情況に遭いながら,使用者が申請を拒否したり渋ったりしたら,労基署に相談してみるといいだろう。

実際,労基署では労災事故として申請される件数が多く,事務処理に手が回らないために,申請者を断念させようとする「追い返しおじさん」のような悪質職員が一部にいることが,マスコミでも報じられ,社会問題になったことは周知の通りだ。

また使用者にとっては,業務災害が発生したとなると,不法行為を疑われる場合と同様に労基署から厳しい対応を取られかねないため,労災隠しなどの労働者の権利を無視した不法行為にはしることもあるが,通勤災害の場合は,使用者の義務や法令遵守が直接問われることがない分,素直な対応を取りやすい。通勤災害を隠蔽して使用者が得る利益も失うべき面子もない。もらえるものはもらうべきという点で,使用者・労働者の利害は一致するはずだ。

逆に,いくら使用者側が労災申請に協力的であっても,それに頼ってばかりいるわけにはいかない。通勤災害の場合は,使用者の管理下で発生したものではないため,事故などの情況を説明・立証するにあたって,労働者−申請者が万全を期す必要がある。それだけ挙証責任が大きくかかってくるわけだ。申請書類に発生時の情況や経緯を具体的かつ説得力ある形で述べることが要求される。負傷して救急車を呼んだり病院に行く場合も,なるべく早いに越したことはない。警察への届け出や目撃者の確保もできればなおいい。

(2006.11.11)

Bicycle-つれづれなること: